悪名は無名に勝る! 『宇宙からのツタンカーメン』ネタバレあらすじや感想

ホラー

『宇宙からのツタンカーメン』ネタバレあらすじ

消えたミイラ

カリフォルニア科学大学の考古学者ダグラス・マッカデン教授によって、エジプトはツタンカーメンの王墓より新たな棺が発見されました。
棺は調査のため、直ちに大学へと空輸されます。
棺には「アンク・ヴェン・ハーリス(高貴なる旅行者)」という名の、緑のカビに覆われたミイラが安置されていました。
調査は慎重に進められましたが、レントゲン撮影の際、研究員シャープは誤って10倍の放射線量をミイラに照射してしまいます。

その日の夜、フィルムを現像したシャープはミイラの遺品が棺に隠されていることを知り、人知れずミイラの遺品である5つの水晶をくすねてしまいました。
やがて、ミイラの身に着けていた水晶が光り輝き、ミイラ自身もゆっくりと動き始めます。

レントゲン撮影の結果、ミイラの体は頭蓋骨も背骨も通常の人間とは異質のものであり、さらには内臓を除去する防腐処置もおこなわれていない等、極めて異例なことが分かりました。
また、ミイラを覆うカビは休眠状態にあり、病理学者のケン・メルローズ博士に分析が依頼されました。

教授がフィルムをもとにミイラの遺品が収められた部分を開けると、なぜか活性化した緑のカビがありました。
未知のカビに触れた研究員マイケルが負傷し、ケン博士も学長にマスコミへの記者会見を中止するよう求めましたが、学長は強引に会見を開いてしまいます。
しかし、大勢のマスコミの前で開かれた棺はすでにもぬけの殻でした。

未知の菌の脅威

大学では直ちに失踪したミイラの捜査が始まりました。
一方、マイケルの手はカビによって壊滅的な被害を受けていました。
カビは人間の組織を侵食して自らを増殖する非常に危険な菌だったのです。

シャープは盗んだ水晶を売りさばこうとしましたが、全くの無価値と判断され売れなかったので、5つの水晶をそれぞれ、恋人のシェリーへプレゼントし、友人のグレッグに売りつけ、スタンリービルには借金のカタとして渡してしまいました。

グレッグが恋人のエレンにさっそくペンダントとしてプレゼントしたところ、突如ミイラが現れ、彼女の首元から水晶を引きちぎって消えました。
ミイラに触られたエレンは重症を負い、病院で治療を受けます。
ところが、検査のためレントゲン撮影をしたところ、エレンの首に付着していた菌が爆発的に増殖し、エレンは首から上すべての組織を破壊され死亡しました。
ミイラを覆っていた菌が活性化したのは放射線の影響だったのです。

ダグラス教授はミイラの副葬品である巻物の解読に成功しました。
それによると、ツタンカーメンの時代、兵士たちが砂漠で不思議な外見の異国人を発見し、神だと考えた彼らはツタンカーメンと異国人を引き合わせました。
すると、弱っていた異国人に触れたツタンカーメンや召使いの肉体は病に冒されてしまいます。
そこで、恐れた兵士たちは異国人を生きたまま棺に入れ埋葬してしまった、ということです。

忍び寄るミイラ

大学の社交クラブの仮装パーティーで浮かれ騒ぐシャープたち。
意中の女に振られ、贈るつもりだった水晶を持て余すビルをミイラが狙います。
ミイラは一瞬で水晶を奪い取ると、文句をつけてきたビルを振り払いました。
あまりの怪力に、吹っ飛ばされたビルは壁に全身を打ち死んでしまいます。

シャープから水晶をもらったもう一人であるスタンリーは、スージーがダグラス教授とつきあっていることを知りながら、彼女の気を引くために水晶の付いたバングルをプレゼントしました。
スージーとダグラス教授が二人でいると、ふとしたことで、水晶から何かの回路図が投影されていることに気付きます。
それはミイラの副葬品である未知の紙に描かれた図と同一のものでした。
研究員パーカーも加え3人でミーティングをした結果、回路図や水晶は何らかの送信機に使うのではないか、と結論が出ます。
送信機の超長距離信号について調べるため、スージーは天文学センターへ向かいました。

スージーが調べ物をしていると、突然水晶が光り始めます。
その瞬間、スージーの目の前にミイラが姿を現しました。
スージーは必死に逃げますが、ミイラに水晶を奪われた衝撃で屋上から落ちてしまいました。

ミイラの目的

幸いスージーの怪我は重症ではなく、被害にあったスージーの証言で様々なことが分かりました。
すなわち、消えたミイラは生きて動いていて、彼の目的は飽くまで水晶を取り戻すことだけだったのです。
ミイラの目的が分かったため、ダグラス教授たちは残りの水晶の捜索に向かいます。
水晶を盗んだ犯人はシャープだと発覚し、ダグラス教授はシャープを問い詰めました。
シャープは自白し、自分で持っていた水晶を返しましたが、残り最後の水晶はシェリーの家にありました。
運の悪いことに、シェリーの家にはパーカーの恋人ジェニーが同居しており、パーカーは急いで家に駆け付けます。

ミイラは一足先にシェリーの家に到着していました。
入浴中のジェニーに今まさに危機が訪れようとしていましたが、ミイラは洗面台にあった水晶を持ち去っただけで、ジェニーには指一本触れませんでした。

一方、ダグラス教授はミイラの目的が超長距離送信機の作成であると見抜き、ミイラが電源を確保するために研究用原子炉に来ることを見越して先回りしていました。
原子炉には予想通り、ミイラが持っていた回路板・水晶・変圧器がセットされています。
ダグラス教授も自分の持っていた水晶を組み込んでみました。
しかし、そこに学長と警備員たちも鉢合わせしてしまいます。
警備員は一連の事件をダグラス教授の犯行と決めつけ、逮捕しようとしました。

そこへ、果たして予想通りミイラがやって来ました。
ミイラはダグラス教授たちを気にも留めず、最後の水晶を回路板にセットします。
すべての必要な要素が揃い起動を始めた装置が光を照射すると、ミイラの胸元の水晶に吸い込まれていきます。
すると、ミイラは本当の姿である宇宙人へと変貌を遂げました。
警備員は恐れをなして宇宙人を撃ちましたが、ダグラス教授は自分の身を挺して宇宙人をかばいます。
彼の行動に感謝してか、宇宙人がダグラス教授に手を差し伸べると、次の瞬間2人の姿は異空間へと消えました
後には水晶が残され、欲深な警備員が思わず掴むと、彼の手は菌によって崩壊するのでした…

タイトルの問題について

本作を語るにあたって、まず避けて通れないのがタイトルの問題です。
世にダメ邦題は数あれど、本作はタイトルでオチがネタバレしてしまうという最悪な部類にあることで、つとに有名です。

そのタイトルも変遷があって、日本で初めて放送された(本作はビデオスルー)テレビ朝日「日曜洋画劇場」では、『宇宙から来たツタンカーメン/消えたミイラ!全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』、次のテレビ東京では
『タイム・ウォーカー/時空の聖櫃』、DVD化の際には『宇宙からのツタンカーメン/タイム・ウォーカー 時空の聖櫃』となっているのです。
原題は『Time Walker』ですから、こうして見るとテレ東のタイトルがもっとも近いことになりますね。
しかし、原題に忠実だから正しいかというとこれまた別の問題でして、とても内容で勝負できたものでない本作がこのタイトルで統一されていた場合、おそらく誰の記憶にも残らず、全く知名度もなく、ソフト化もされなかったでしょう。
それに比べてテレ朝の滅茶苦茶なタイトルは突き抜けています。
いきなりタイトルでネタバレしているばかりか、ツタンカーメンは全く関係ありません。(ミイラと接触した程度)
そもそもツタンカーメンは人名なのに、インパクト重視で内容を捏造してしまう手法が悪質です。
さらにはサブタイトルがまた酷い!
いちおうミイラは消えるし、入浴中のジェニーに迫るのもその通りだし、古代エジプトでは宇宙人は神とみなされていたので、どれも嘘ではないのですが、この下品なアオリは何とかならなかったのか。
つまり、本作はひどい邦題とひどい内容であるが故に、世間(ごく狭い界隈だが)の話題になったのであり、まさに「悪名は無名に勝る」の良い例だったわけです。

また、そもそも原題のタイム・ウォーカーだって、本編を観た後では首をひねるタイトルです。
宇宙人は別の星から地球に来て、ラストで転送装置(これも超長距離送信機のはずではなかったか)を使って帰ったわけですが、時間を超えたという描写はありません。
そうなると、古代エジプトの時代から3000年後の現代で蘇ったことを指すのでしょうが、なぜ宇宙人は死なずにいたのか、菌と宇宙人はどう関係しているのか、肝心の部分の説明が一切放棄されています。
タイトルにもなっている時空や時間は本作にとって些末な要素なのではないでしょうか?

タイトルだけは有名で噂には聞いていたけれどなかなか観る機会がなかった本作が、配信で観られるようになったのは大変喜ばしいことです。
やはり、こういった作品が観られるのが動画配信サービスの醍醐味だと思うのです。

感想 『ET』になれなかったサスペンス

様々なところで酷い言われようの本作ですが、鑑賞後にまず思ったのが「これはホラー映画ではない」ということです。
邦題のサブタイトルも完全にホラー映画だし、当時の宣伝もホラーとして売り出していたのかもしれませんが、この内容は完全にサスペンス映画です。
なぜならミイラは全く人間に危害を加える気はなく、ただ母星に帰るために水晶を回収しただけだからです。
不幸にも水晶を取り戻す過程で、勝手に人間が被害が大きくなる行動をとったに過ぎません。
その意味ではあらゆる元凶となったシャープが、全方向に迷惑をかけまくった挙句、何のおとがめもなかったのは非常に後味が悪いと言えましょう。
本作がホラーであるならシャープは最も惨たらしく殺されるべきであり、彼の所属する社交クラブというヤリサーも、乱痴気騒ぎの最中にミイラに乱入されて「13日の金曜日」のように皆殺しにされるべきでした。
ところが、そのようにミイラが紳士的なため、被害者が出ても全然残酷な絵面にならないのです。
むしろ、孤立無援のなか必死に装置を稼働させようとする姿は可哀想とすら思います。

月を見て故郷を思うミイラの姿には哀愁すら感じませんか?
本作のジャケットがやはり月を見上げる宇宙人なのも、その悲哀がメインだからなのではないでしょうか。

そう、本作は『ET』になり損ねたサスペンスだったのです。
ミイラの行動は「ET、おうち、でんわー」と同じなのです。
『ET』も本作も公開は1982年。
その影響があったかは不明ですが、少なくともその類似性は否定できません。
ただし、映画としての出来は雲泥の差ですが…
そういうわけで、私は本作をホラー映画に分類するのは誤りであると考えます。
本作の敗因は無理やりホラー映画という体にしてしまったことにあります。
これは宇宙人と人類の不幸な邂逅という悲劇だと解釈してください!

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